やりたい放題し放題
「イギリス、イギリス」 不意に後ろから飛びつかれて、イギリスの持っていたカップは大きく揺れ、緋色の液体の数滴分の落下を許してしまった。 着ていたシャツにじわりと染みが広がり、イギリスは「あーあ」と思った。これは洗っても落ちそうにない。気に入りのシャツだったのに。 それでも笑みが零れるのは、首にしがみついている温もりが愛しくて大切だからだ。高価なシルクのシャツなどよりもよほど。 「どうした?」 テーブルにカップを置き、自然に綻ぶ顔を向けてやると、アメリカは内緒話をするようにイギリスの耳に口を寄せてきた。 「今から言うことは、誰にも内緒だぞ。俺のとっておきの秘密だからな!」 「ああ」 森で鳥の巣でも見つけたのだろうか、と想像していたら、アメリカはそれはそれは嬉しそうに、声をひそめてこう告げた。 「俺、イギリスのこと大好きなんだぞ!」 何かくすぐったいような。 もどかしいような。 微笑ましいような。 たくさんの温かな気持ちがないまぜになって、赤くなる顔をごまかすように、イギリスはアメリカの髪をぐしゃぐしゃとかきまぜた。 「知ってるよ」 俺もだ、と小さく呟くと、ひまわりのような笑顔が返ってきて、イギリスはアメリカのその笑顔が十年先も百年先もずっとずっと変わらないといいと、ひそかにそう思った。 瞬間の永遠を願った、遠い日のはなし。
刹那が今でもあなたの中で鮮やかな光を放っているのなら、それは永遠なのではないでしょうか 痛みすらもいとおしい
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